同じコーヒーなのに、一杯ごとに表情がまるで違う。そんなふうに感じたことはありませんか。その理由の多くは、豆が育った農園にあります。標高や土、気候、そして育てる人の手。ひとつの味は、たくさんの背景からできています。
カフェのメニューで、エチオピアやコロンビアといった国名を見かけますよね。あれは産地を示しているだけではなくて、そのコーヒーの味のもとになる地図のようなものです。同じ品種でも、育つ場所が変わると、カップの中の印象はがらりと変わります。
標高が、酸味を決める
コーヒーの実は、標高が高いところほどゆっくり熟していきます。昼と夜の気温差が大きい高地では、実のなかに甘みや酸のもとがじっくりたくわえられます。これが、明るくて華やかな酸味につながっていきます。
高地のコーヒーは、果実のように香る。それは時間がゆっくり育てた味です。
たとえば標高1,800メートルを超えるエチオピアのイルガチェフェでは、ベリーやかんきつを思わせる華やかな酸味が生まれます。いっぽうで、低い土地で育つブラジルは、ナッツやチョコレートのような落ち着いた風味になりがちです。どちらが上ということではなくて、それぞれの土地が、それぞれの個性を描いています。
精製のしかたでも、味は分かれる
収穫した実から豆を取り出す工程を、精製と呼びます。実をつけたまま乾かすナチュラルは、発酵による濃い甘さとフルーティさが出やすく、洗い流すウォッシュトは、すっきりと輪郭のはっきりした味になります。同じ豆でも、ここでの選びかたで印象が変わります。
次の一杯を、ちょっとだけ深く
次にカフェへ行ったら、メニューの産地に少しだけ目を向けてみてください。そして、飲んだ一杯を記録してみる。エチオピアは華やかだった、くらいの短いメモでも十分です。その積み重ねが、やがてあなただけの味の地図になっていきます。